昨夜未明

河童はいる

充血してる

死をもって別れる事に後悔はないか?勿論だ。互いを想い合う理性的な別れ、勇敢な優しい別れ、そんな自分で自分の生爪を剥ぐくらい苦しいことがすんなり出来るならまずこんな結論が出るわけないんだから。強制暗転、問答無用で閉まる幕、選択の余地なんてい…

薔薇、その様式と刮目

池袋の雀荘でアルバイトしていたころ、代走は絶対に引き受けないようにしていた。これも店員の務めではあるのだが、曲がりなりにもルールは知っているにせよ、”運”が凝縮されたこのゲームにおいてもし目の前でエレベーターを乗り逃がすようにフッと負けでも…

上田岳弘「私の恋人」

表題書籍、読後感想です。 2013年に「太陽」にて新潮新人賞を受賞・デビューした作者がその2年後に発表した本作は第28回三島賞を受賞。 「時空を超えて転生する「私」の10万年越しの恋。」とのコピー(新潮社HP参照)の通り、主人公たる「私」は記憶を保持した…

外国のお菓子を食べる

外国のお菓子が苦手である。 長期休み明けの職場やバイト先で必ず出現する海外旅行のお土産。レゴブロックのような原色を用いたド派手なデザインのパッケージだけでもキツイのに、そこへさらに訳の分からないキャラクターがでかでかと描かれたりなんかしてい…

アンテロープ

「今何時?」 「10時よ」長髪の娘が怒ったような口調で答える。日差しは換気の滞った部屋へシャープに切り込んで、色素の薄い水曜の朝を静かに起こす。すらりとした脚が布団の海を蹴飛ばして跳ね上がる。不機嫌そうな声音は眠気によるものだということを、短…

ユニセキュラーの午後

わたしは外出先で、一人でご飯を食べることができない。別に要介護認定されてるとかいうわけでなく、お店に入ったりお弁当を買ったり、ただ単純にちゃんとした食事をとることができないのだ。例えば誰も知り合いがいないバイトの休憩時間、大学の昼休み、わ…

よい建物Vol.1 代々木のモノリス

部活の都大会が終わった中学3年生の夏に、ウンウン唸るDVDプレーヤーの前にかじりついてアニメ版エヴァンゲリオンを一気見したときから、「無機質」の概念は私の中に一つの憧れとして深く根を張った。もわっと熱気のこもる四人家族が10年住んでいる借家の一…

船は遠く

ハンバーグが嫌いな人間なんて存在しないと思っていた。 初めて雪彦の家の最寄りのスーパーで買い物をし、雪彦の家のキッチンを借りた日、張り切って多めに買い込んだ食材を余すことなく(時には無駄にしながら)使い、クックパッド片手に作った湯気をあげる合…

ずっとグルーピー

andymoriを聴くと思い出す人がいる。 それは高校2年生の頃に知り合った男の人で、彼はわたしと出会う前からずーっとバンドをやっていた。そのとき21歳だったから、もう28歳くらいになるのだろうか。ライブハウスの真ん中でギターを弾いては歌っていた。名前…